院長ブログ
子どもが受け口になる4つの原因と治療法について解説

下のあごが上のあごよりも前に出ている受け口は、放っておくと見た目だけでなく、子どもの健康面や心の成長に影響することがあります。
子どもが受け口になったのは、「もしかして遺伝かな?」「癖のせい?」と心配されている方もいらっしゃるかもしれません。そこで本記事では、子どもの受け口の原因や放置するリスク、治療法を解説します。
受け口になる4つの原因
受け口とは、下のあごが上のあごよりも前に出ている状態のことです。
専門用語では、「下顎前突(かがくぜんとつ)」や「反対咬合(はんたいこうごう)」と呼ばれています。
では、なぜ受け口になってしまうのでしょうか?考えられる原因を見ていきましょう。
●骨格のバランス
上あごが十分に成長しないと、相対的に下あごが前に出ているように見えてしまいます。
逆に下あごが成長しすぎてしまうと、受け口になりやすい傾向があります。
●遺伝
あごの骨格は遺伝による影響を受けやすいです。そのため、両親どちらかが受け口の場合は、子どもにも引き継がれる可能性があります。
●鼻の病気
慢性的な鼻炎やアデノイド肥大(鼻の奥にあるリンパ組織が大きくなること)で鼻が詰まると、どうしても口呼吸になってしまいがちです。
口呼吸により口を開けている時間が長くなると、舌の位置が下がり、下あごを前に押し出す力が働いて受け口を招くことがあるため注意しましょう。
●指しゃぶりや舌の癖
長期間にわたって指しゃぶりが続くと、上の前歯が前に押し出されたり、下の前歯が内側に押されてしまったりすることがあります。舌で常に歯を押す癖も受け口の原因の一つです。
また、うつぶせ寝や頬杖をつく癖もあごの成長に影響を与える可能性があります。これらの癖は、無意識のうちに行われていることが多く、自身も気づいていないことが多いです。
放置するとどうなるの?
「まだ小さいし、様子を見ようかな」そう思っている保護者の方は多いです。
しかし、受け口を放っておくと、以下のような影響が出てくる可能性があります。
●成長するにつれて受け口が目立つようになる
成長するにつれて、下あごがさらに前に出てしまうことがあります。すると、横顔のラインが変化し、いわゆる「三日月顔」になってしまうこともあります。
●食べ物を噛み砕く機能が低下する
受け口は、本来噛み合うべき上の歯と下の歯の位置が逆転している状態です。そのため、食べ物をしっかりと噛み砕くことができず、胃腸に負担がかかり、お腹の調子が悪くなったり、栄養を十分に吸収できなかったりすることがあります。
また、柔らかいものばかり好んで食べるようになったり、食事自体が億劫になったりする可能性もあります。
●顎関節症のリスクが高まる
受け口を放置すると、顎関節に負担がかかり「顎関節症」になってしまうリスクが高まります。顎関節症とは、顎関節や周りの筋肉に痛みや違和感が出る症状のことです。
口を開け閉めする際に「カクッ」と音が鳴ったり、痛みが出て顎がスムーズに動かせなくなったりすることもあります。ひどくなると、食事や会話が困難になり、日常生活に支障をきたすことがあります。
●発音が聞き取りにくくなる
受け口は、発音する際の空気の流れや舌の動きが妨げられてしまうことがあります。それにより、「サ行」「タ行」の発音が不明瞭になる傾向があります。
特に中学・高校生くらいの敏感な時期は、発音が大きなストレスになることも。コンプレックスを持ってしまうと、友達との会話も楽しめなくなる可能性があります。
受け口の治療法とは
子どもの受け口の治療は、あごの骨の成長をコントロールする方法が一般的です。子どものあごの骨はまだ柔らかく、成長過程のうちに治療を開始することでスムーズに受け口を改善できるため、早ければ早いほど良いでしょう。
しかし、治療法は子どもの年齢や受け口の程度によって異なるため、適切な治療法を選択することが大切です。ここでは、子どもの受け口の主な治療法を3つ紹介します。
●マウスピース型矯正装置
取り外しができるマウスピースを使った方法です。代表的な装置には、「プレオルソ」や「ムーシールド」・「T4K」などがあります。
その中でも当院では、「プレオルソを」使用しております。
【 プレオルソとは 】
プレオルソは、柔らかい素材でできたマウスピース型の矯正装置です。日中1~2時間と就寝時に装着するだけで、舌の位置や口周りの筋肉を正しいバランスへ導き、受け口の改善をサポートします。ワイヤー矯正に比べて痛みが少なく、取り外し可能なため、食事や歯磨きの際もストレスが少ないのが特徴です。

●上顎前方けん引装置
7歳頃になったら、受け口の治療として「上顎前方牽引装置(じょうがくぜんぽうけんいんそうち)」という選択肢も出てきます。上あごを前に優しく引っ張りながら、下あごの成長を抑える装置です。あごの骨の成長をうまく利用して、受け口を改善していきます。
装着するのは1日10時間程度、主に夜間や就寝中のみです。取り外しが可能なので、食事や歯磨きの際も邪魔になりません。
●チンキャップ
11歳頃になると、上あごの成長はほぼ終わりますが、下あごは成長を続けます。チンキャップは、下あごの過度な成長を抑える装置です。装着時間は1日10時間程度、主に就寝中になります。
チンキャップである程度骨格をコントロールした後、永久歯が生え揃う12歳頃からワイヤー矯正を併用することで整った歯並びを目指せます。
まとめ
受け口は、骨格・遺伝・鼻の病気・指しゃぶりなど、さまざまな原因が考えられます。放置すると見た目の変化だけでなく、かみ合わせや発音などに影響を与える可能性があるため、早期に改善することをおすすめします。「もしかして受け口かも?」と感じたら、早めに歯科医師に相談しましょう。